CAHIERS1894〜1914の買取実績詳細
- 買取書籍名
- CAHIERS1894〜1914
- 買取金額
- ¥14,500
- 買取日
- 2025年8月9日
- 買取方法
- 出張買取
- ジャンル
- 洋書
- 冊数
- 5冊
- 主な内容
- ポール・ヴァレリー CAHIERS1894〜1914 5冊セット
- 本の状態
- やや劣化
- 買取理由
- 書棚の整理
- 高価買取となった理由
- 専門性が高く、原書版は研究者や仏文学愛好家の間で根強い需要があるため、特に揃いの良いセットは高価買取の対象となるため
※掲載している買取実績は、お客様の同意を得た上で一部情報を加工しております。買取価格は市場価値や本の状態により変動いたします。
ポール・ヴァレリー CAHIERS1894〜1914 5冊セットの買取を行ったスタッフからのコメント
今回お伺いしたのは、東京都足立区にお住まいのご依頼主様です。足立区は東京23区の中でも下町情緒と都市機能が共存し、昔ながらの商店街と再開発エリアが入り混じる多彩な地域性を持っています。古くからの住宅街では、長年同じ家に暮らし続ける方が多く、書斎や趣味の部屋を設けて膨大な蔵書を大切に保管されているケースも少なくありません。今回のご依頼主様も、玄関をくぐった瞬間から漂う独特の紙とインクの香りで、書物への深い愛情と長年の収集歴を感じ取ることができました。
ご案内いただいた書斎は、床から天井まで届く大型書棚が壁一面に設置され、和書・洋書・美術書・専門書がジャンルごとに整然と並べられています。書棚の一角、正面の目立つ位置に置かれていたのが、今回お譲りいただいた「ポール・ヴァレリー CAHIERS 1894〜1914」全5冊セットです。黒地に金箔押しのタイトルが映える布クロス装丁は、高級感と気品を兼ね備えた佇まいで、書棚の中でもひときわ存在感を放っていました。
一冊ずつ丁寧に手に取り、外装と本文の状態を確認しました。装丁は経年によるわずかな色褪せがあるものの、角の潰れや擦れはほとんど見られず、保存状態は非常に良好です。背表紙に施された金箔の文字は鮮明で、摩耗によるかすれはごくわずか。本文ページは厚手の上質紙が使われており、インクの発色も鮮やかで、文字がくっきりと浮かび上がっています。紙面にはヤケやシミはほぼなく、書き込みや蔵書印、ページの破れや欠落もありません。洋書は湿度や光の影響を受けやすく、保管が不十分だと紙の波打ちやインクの退色が起きやすいのですが、このセットにはそうした劣化の兆候はまったく見られませんでした。保管環境を伺うと、直射日光を避けた部屋で温湿度を一定に保ち、年に数回は本を取り出して埃を払うなど、理想的な管理を徹底されていたとのことです。
ポール・ヴァレリー(Paul Valéry, 1871-1945)は、20世紀フランス文学を代表する詩人であり思想家です。象徴主義詩人マラルメの影響を受けながらも、自らの文学的・哲学的世界を築き上げ、その活動は詩作にとどまらず、美学、哲学、科学論、政治論へと広がりました。彼が生涯を通じて書き続けた日々の思索の記録が「CAHIERS(カイエ)」です。1894年から亡くなる前年まで、ほぼ毎朝4時間以上をノート執筆に費やし、その総量は約26,000ページにも及びます。
今回の「CAHIERS 1894〜1914」は、ヴァレリーの知的形成期から第一次世界大戦直前までの20年間を収録しており、文学史・思想史的に極めて重要な資料です。この時期は詩作活動と並行して、科学的思考や哲学的探求が飛躍的に広がった時代であり、ノートには詩の構造分析、韻律や語感に関するメモ、芸術批評、音楽や建築に関する考察、幾何学や物理に関する数式や図表、意識や知覚に関する哲学的断章などが書き連ねられています。これらは後年の評論や講演、詩作品の原型となるものであり、断片的でありながらヴァレリーの思考の軌跡を生々しく伝えています。
原文フランス語で記された本文は、韻律や語感、文体のリズムをそのまま感じ取ることができ、翻訳では伝えきれないニュアンスを味わえるのが魅力です。今回のセットは注釈や巻末索引も充実しており、研究者が特定のテーマやキーワードから必要な箇所を迅速に探し出せる実用性も備えています。文学研究者や哲学者、美術批評家、さらには高度なフランス語学習者にとっても、極めて価値の高い一次資料といえます。
査定時に特に重視したのは以下の4つのポイントです。
- 揃いの完全性
5冊すべてが揃っており、欠巻や版の不一致がない完全揃いであることは、大きな評価ポイントです。揃いの状態は市場価値に直結し、単巻と比べて買取価格が大幅に上がります。 - 保存状態の良さ
装丁や本文の紙質が非常に良好で、経年劣化は最小限。角や背の擦れも少なく、インクの鮮明さや紙の質感がしっかり保たれています。書き込みや蔵書印、破れ、ページ欠落などの減点要素もなく、コレクション用途にも研究用途にも耐えうる状態でした。 - 版と編集内容の価値
学術的信頼性の高い編集版で、注釈や索引が豊富に付されている点も評価されました。研究資料としての実用性が高く、学術市場や古書市場での需要を高めています。 - 市場での需要
ヴァレリーのCAHIERSは、文学・哲学・芸術の分野において国内外で安定した需要があります。特に完全揃いで保存状態の良いものは市場流通量が少なく、希少性の高さが価格に反映されます。
ご依頼主様は「長年の研究生活を支えてくれた本だからこそ、次に必要としてくれる人に引き継ぎたい」と話されていました。当社ではこの思いを尊重し、保存状態や希少性、市場動向を総合的に判断して査定額をご提示。査定理由や市場背景についても丁寧にご説明し、ご納得いただいた上で即日買取・お支払いまで完了しました。重量のある洋書セットも、当社スタッフが責任を持って梱包から搬出まで行い、輸送中のダメージを防ぐため適切な保護材を使用します。
足立区は、北千住、綾瀬、竹ノ塚、西新井、梅島、舎人など、多様な地域性を持ち、それぞれのエリアで異なる文化や生活様式が息づいています。文学や芸術、語学教育に関心のある方も多く、洋書や学術書、美術書などの質の高いコレクションをお持ちの方が多いのも特徴です。今回のように保存状態の良い希少本は特に高額査定が可能であり、次の持ち主のもとで再び活用されることが期待されます。
当社では足立区全域および東京23区、近郊エリアで出張買取を行っており、洋書、美術書、古典籍、全集、専門書、歴史資料、語学書、思想書など幅広いジャンルに対応しています。保存状態や揃いの確認を丁寧に行い、希少性や市場価値を正確に反映した査定をお約束します。「ポール・ヴァレリー CAHIERS 1894〜1914 5冊セット」は、文学史に残る知的遺産であり、所有すること自体が文化的意義を持つ逸品です。新しい持ち主の手に渡り、ヴァレリーの思索が未来へ受け継がれていくことを心から願っています。手伝いをいたします。