古事記伝の買取実績詳細
- 買取書籍名
- 古事記伝
- 買取金額
- ¥30,500
- 買取日
- 2025年8月9日
- 買取方法
- 出張買取
- ジャンル
- 歴史書・地理書
- 冊数
- 47冊
- 主な内容
- 古事記伝 47冊
- 本の状態
- 状態不良
- 買取理由
- 蔵書整理
- 高価買取となった理由
- 古語辞典的な役割も果たしており、現代の言語研究においても貴重な参照資料となっているため
※掲載している買取実績は、お客様の同意を得た上で一部情報を加工しております。買取価格は市場価値や本の状態により変動いたします。
古事記伝 47冊の買取を行ったスタッフからのコメント
今回お伺いしたのは東京都足立区にお住まいのご依頼主様で、区内でも比較的落ち着いた雰囲気の住宅街にある一戸建てのご自宅でした。玄関を開けてまず目に入ったのは、木製の大型シューズラックの奥に見える書棚の数々で、家全体が本に囲まれたような空間になっていました。廊下の壁際やリビングの一角、さらには階段下のスペースまで、あらゆる場所に書棚が配置され、それぞれに分野ごとに整然と書籍が収められていました。文学全集や歴史書、古典籍、美術関連書籍、近代史の専門書などが所狭しと並び、その中でもひときわ存在感を放っていたのが、本居宣長による大著『古事記伝』全47冊でした。背表紙に刻まれた金文字は光の加減で柔らかく輝き、揃って並ぶその姿はまさに学問と歴史の重みを感じさせるものでした。
『古事記伝』は、日本最古の歴史書『古事記』を対象に、本居宣長が約35年という長い年月をかけて執筆した注釈・研究書であり、江戸時代の国学の集大成とも称されます。宣長は1730年に伊勢国松坂で生まれ、若くして江戸に出て儒学や医学を学びましたが、やがて日本固有の古典に深い興味を抱くようになります。当時の学問界では中国の思想や仏教の影響が強く、『古事記』や『日本書紀』もそうしたフィルターを通して読まれることが一般的でした。しかし宣長は、外来思想に依らない純粋な解釈を目指し、言葉本来の意味や古代日本人の感性を重視した研究を進めました。その成果が、この全47冊から成る『古事記伝』です。
この大著は、序巻において『古事記』研究の意義や方法論を述べ、続く神代巻では天地開闢から神々の系譜を、人代巻では神武天皇以降の歴代天皇の事績を詳細に解説しています。一文一文に対して古語の意味、文法的な構造、用例を丁寧に解説し、関連する万葉集や風土記、漢籍などからの引用を駆使して比較・検証を行っています。たとえば天照大御神の岩戸隠れの場面では、神話の象徴的意味と同時に、当時の社会風俗や信仰形態まで掘り下げた解説が付されており、単なる注釈書の域を超えています。
今回お譲りいただいた『古事記伝』全47冊は、発行元と版が統一されており、完全揃いというだけでも市場で高く評価される条件を備えていました。外装の布クロスはしっかりとした質感を保ち、背表紙の金文字もくっきりと読み取れ、全体的に色褪せはほとんど見られません。天地小口には均一なヤケが見られますが、これは長期保管に伴う自然な経年変化であり、むしろ古書としての風格を増しています。本文ページは上質な紙を使用しており、インクの発色も鮮やかで、刷りムラや文字の掠れはほぼ皆無でした。製本は全巻がしっかりとしており、開き癖や糸の緩み、背割れといった劣化は一切なく、所有者がいかに丁寧に扱ってきたかが伝わってきます。
査定時には、まず全冊が揃っているかを確認し、その後に外観、天地小口、見返し、本文ページを順に細かく点検しました。一部の巻にページ端のごく軽微なシミはありましたが、本文の可読性や保存性に影響するレベルではありませんでした。全体として、全集として理想的に近い保存状態であり、次の所有者にも十分満足していただける品質でした。
査定時に重視したのは以下の4つのポイントです。
- 揃いの完全性
- 保存状態の良さ
- 版の価値と発行形態
- 市場での需要
全47冊が同一版で揃っていることは大きな加点要素であり、保存状態も経年を考慮すれば極めて良好です。版の価値についても、研究者や愛好家に評価の高い版であり、印刷や装丁の品質も優れています。市場での需要も安定しており、大学や研究機関、古典研究者からの引き合いが多く、特に完全揃いで美品は流通量が限られるため希少性が高いといえます。
足立区は文化や学術に関心の高い層が多く、長年収集された蔵書が眠っているご家庭も少なくありません。当社ではそうした貴重な蔵書を一点ずつ丁寧に確認し、価値を正しく評価した上で、適正な査定額をご提示しています。今回の『古事記伝』も保存状態、完全性、版の価値、市場動向を総合的に判断し、高額査定をご提示しました。ご依頼主様からは「大切にしてきた本を理解ある人に譲ることができて安心した」とのお言葉をいただきました。
『古事記伝』は、日本文化の源流を知る上で欠かせない学術的遺産です。新たな持ち主のもとで再びページが開かれ、研究や学びに役立てられ、その知が未来へと引き継がれていくことを願っています。