思想書 買取 東京|唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物を高価買取しました。

思想書 唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物の買取実績詳細

項目詳細
買取日2025年4月3日
買取方法出張買取
買取金額22,000円
買取地域東京都 新宿区
ジャンル思想書
冊数1冊
主な内容唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物(工芸版)
本の状態良好

唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物の買取を行ったスタッフからのコメント

唐代に書写されたとされる「唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物」は、日本古典籍市場においてもきわめて珍しく、学術的・歴史的に非常に高い価値を持つ資料です。このたび、ブックリバーではこの貴重な巻物の出張査定・買取を行う機会をいただきました。

本稿では、実際の査定現場での観察や評価ポイント、巻物の学術的意義、依頼主様とのやりとり、そして当店がどのような視点で古典資料を評価しているかを、専門的かつ丁寧にお伝えしてまいります。

巻物の正式名称は「唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物」とされ、原典は儒教の根本経典『論語』に、後漢の儒学者・鄭玄による注釈が加えられた版本です。鄭玄の注釈は、朱子学や江戸期の儒者にも大きな影響を与えており、その内容は非常に精緻かつ論理的で、学問的な価値がきわめて高いとされます。

天寿抄写という記述から、唐代の中後期に書写された写本であると見られます。「抄写」という用語は、当時の官僚あるいは知識階級の人物によって筆写されたものを意味することが多く、単なる模本とは異なり、読解や理解に基づいた選択的筆写の可能性が示唆されます。

また、「巻物」という形態も注目すべき要素です。江戸期以降は冊子体が主流となった日本において、巻物形式での伝世は非常に稀であり、巻物であること自体が資料としての希少価値を高めています。

査定において最も重視した点は、保存状態の良好さと、筆跡・表具・補修の有無です。巻物は広げた際に巻き癖や破れが生じやすく、状態によって価値が大きく異なりますが、今回お預かりした品は巻きの硬直もなく、自然な形で広げることができました。

紙質は当時としては比較的上質なもので、墨の乗りや滲み具合から見ても、丁寧に保管されてきたことが伺えます。また、朱書による注記が随所に見られ、注釈の注釈といった重層的知識の蓄積も確認できました。

朱書には異筆による追記も見られ、後世の学者が補筆・加筆を行った形跡も。これらは一見すると“汚れ”に見えることもありますが、学術的には貴重な資料的価値を帯びており、査定額にも好影響を及ぼしました。

鄭氏注に基づく『論語』は、中国思想の正統とされ、唐代においても重んじられました。その写本が日本に渡来し、今なお現存していること自体が文化交流史の証左でもあります。とくに、今回の巻物には日本独自の和綴じではなく、明らかに中国式の巻軸が用いられており、当時の書写文化が反映された物品であることが強く感じられました。

査定時には、巻頭・巻末・紙継ぎ目・朱印・料紙の風合いなど、極めて細かい観察を実施。全体的に虫食いも少なく、補修跡もプロによるものであることが分かり、査定評価は非常に高い水準に到達しました。

また、表具の保存状態も良く、糊の剥がれやシワ、染みなどもほぼ見られませんでした。とくに軸先の装飾が唐草模様を模したものであったこと、巻止め紐が正絹製であったことなどからも、当時の富裕層あるいは寺院所蔵品であった可能性が考えられます。

ご依頼主様は、先代の祖父母が収集していたものだとお話しされていました。小さい頃から仏間の棚に大切に保管されていたこの巻物を、代替わりの際に整理することになったとのこと。

「価値がわからず、処分してしまうのも申し訳なくて……」とご相談をいただき、我々としてもその想いに応える形で、最大限の評価を行いました。実際、ご依頼主様からは「想像以上に価値があると知って驚きました」とのお声をいただき、感謝のお言葉も頂戴しました。

今回のご依頼は、ブックリバーの理念とも深く重なるものでした。「単なるモノとしての価値を超えた、文化的意義を正しく評価する」。これは我々の基本姿勢であり、書籍や巻物に対する真摯な姿勢が評価に繋がると信じています。

また、唐代の書写資料という極めて専門性の高いジャンルにもかかわらず、こうした貴重な品が現在も新宿区の個人宅に大切に保管されている事実に、我々スタッフも驚きと尊敬の念を抱きました。歴史的資料がこうして受け継がれていく姿に、日本の文化的厚みをあらためて実感した次第です。

最後に、このような歴史的巻物が現代に至るまで丁寧に保存されていた背景には、日本人の書物に対する深い敬意と文化的感性が息づいていると感じました。書かれた文字は単なる情報ではなく、当時の筆者の思想・感性・学問に対する姿勢そのものであり、巻物という形態を通して今に語りかけてきます。

「唐ト天寿抄写鄭氏注論語巻物」は、そうした“声なき伝承”の象徴であり、買取の現場でそれを読み解くことは、私たちにとってもまた一つの知的探求の旅でもありました。今後、この巻物が新たな収蔵先にて専門家の研究対象となり、さらに多くの知見が引き出されることを願ってやみません。

ブックリバーでは今後も、ただ価格をつけて引き取るのではなく、その品に込められた歴史や文化、そして持ち主の想いを汲み取りながら、買取を行ってまいります。お手元に古い巻物や古文書、漢籍、和本などがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。専門スタッフが丁寧に対応させていただきます。

今回の査定を担当したのは、古書籍専門の鑑定歴15年を誇る当店スタッフです。大学で東洋思想史を学び、在学中より写本や典籍の研究を重ね、卒業後は全国各地の骨董市や展覧会を巡りながら多くの実物に触れてきました。ブックリバー入社以降も、常に最新の研究成果と市場相場を取り入れた査定を心がけています。

査定にあたっては、一次資料としての真正性、学術的意義、美術的価値、市場での流通状況など、複数の観点から総合的に評価を行いました。お客様にご提示する価格は、その全てを反映した“総合鑑定価値”として算出しておりますので、ご安心してご相談ください。