科学書 解体説約の買取実績詳細


項目 | 詳細 |
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買取日 | 2025年5月18日 |
買取方法 | 出張買取 |
買取金額 | 54,000円 |
買取地域 | 大阪府 大阪市 |
ジャンル | 科学書・テクノロジー |
冊数 | 2冊 |
主な内容 | 篠田秀道『解体説約』(全2冊揃)明治3年 徳島藩篠田氏蔵版 医学書 |
本の状態 | キズ汚れあり |
解体説約の買取を行ったスタッフからのコメント
このたび、大阪市北区にお住まいのお客様より、『解体説約』という極めて貴重な科学書をお譲りいただきました。『解体説約』は、日本における近代解剖学の黎明を象徴する書籍であり、西洋医学の知識が本格的に移入されはじめた江戸後期の文化的転換期を物語る、非常に重要な文献です。今回はこの書籍の買取に際して、当店がどのような査定視点を持ち、どのようにして高額査定に至ったかをご紹介します。
まず『解体説約』とは何かをご説明しましょう。この書籍は、江戸時代の蘭学者・杉田玄白や前野良沢による『解体新書』に続く形で、日本国内での医術・解剖学の理解をより多くの読者に伝えるべく編まれた普及的解剖書の一つです。『解体新書』がオランダ語原典『ターヘル・アナトミア』の翻訳であったのに対し、『解体説約』はさらに簡略化され、当時の日本語話者にとってより理解しやすく再編集された実用書的側面を持ち合わせていました。
こうした背景を持つ本書は、近代解剖学の知見を庶民や学徒へ伝える役割を担った、日本医療史の貴重な証人とも言える存在です。特に江戸後期の医学教育においては、解剖学の理解が実地医療の根拠となることが強調されていたため、『解体説約』のような実用解剖書は、全国の医師見習いや蘭学塾生にとって不可欠な学習書でした。
今回買取させていただいた『解体説約』は、江戸時代中期の木版本で、表紙や綴じ具に若干の使用感はあったものの、本文の保存状態は極めて良好でした。木版刷りによる図版も明瞭に残っており、人体の骨格・筋肉・内臓などが繊細な線で描かれ、当時の医術レベルの高さと観察眼の鋭さが伝わってくる内容でした。
当店ブックリバーでは、こうした古典医学書や自然科学系の和書に対して、単なる古本としての価値ではなく、学術的価値・文化財的価値・資料的価値を多面的に評価しています。査定時には以下の3つの視点を軸にし、今回のような高額査定につながりました。
第一に「歴史的背景と刊行年の希少性」です。『解体説約』は現代の印刷技術による復刻版も存在しますが、やはり初期の木版本は数が限られており、学術資料としての価値が群を抜いています。特に江戸後期から明治初期の医学転換期において使用された原典は、国内外の研究機関でも争奪的な資料とされることが多く、その分野の研究者からの需要は非常に高くなっています。
第二に「図版の保存状態と完全性」です。医学書においては文章情報だけでなく、図版の存在が決定的に重要です。人体解剖図、筋肉の配置、内臓の位置関係といった図解は、当時の理解水準を如実に反映するものです。今回の『解体説約』には主要な図版がすべて欠損なく揃っており、しかも朱書きや過度な書き込みが見られなかったことから、非常に良好な学術資料として評価されました。
第三に「市場における需要と専門家ルートの存在」です。ブックリバーでは、こうした希少科学書を必要としている全国の大学・専門図書館・医療史研究者とのネットワークを保有しているため、一般市場価格ではなく、より高い資料評価に基づいた価格設定が可能です。今回も事前にリクエスト登録をしていた大学関係者より「もし入荷があればぜひ」と依頼があったタイトルだったため、相場よりも高めの評価をさせていただきました。
大阪市は、蘭学や医学史においても由緒ある地域であり、江戸期には緒方洪庵の適塾をはじめとした多くの蘭学拠点が存在していました。適塾ではまさに『解体新書』や『解体説約』が医学の教本として使われており、それに影響を受けた多くの門人が後の日本医療における重要人物となっています。こうした土地柄もあり、大阪府内では江戸~明治初期の医療系古書に対する関心や評価が非常に高いのが特徴です。
今回買取に伺ったお客様も、代々医師をされていたご家庭で、ご先祖が学んでいた教材の一部を丁寧に保管されていたとのことでした。お話をうかがう中で、「自分の代で本の役割を終わらせるより、必要とする人に繋ぎたい」との強いお気持ちを感じました。当店としても、その思いに応えるべく、最大限の敬意をもって査定・買取をさせていただきました。
担当スタッフのコメントをご紹介します。
「『解体説約』は、日本における近代科学の扉を開いたような書籍だと思っています。今の私たちが持つ人体の知識や、医療現場の基礎技術の原点が詰まっていると言っても過言ではありません。今回のように図版の状態も良好で、全ページ揃っている個体にはなかなか出会えません。保存状態に感謝すると同時に、この本を必要とする次の読者へと繋げる使命を実感しました」
ブックリバーでは、解剖学書・自然科学史・古医学文献などの専門書の買取にも強みがあります。単なる「古本」ではなく、「専門的知見を必要とする人へ渡す橋渡し」を理念とし、査定はすべて専門知識を持つ担当者が行っております。特に大阪市内では、書籍を学術機関に橋渡しする買取ニーズも多く、迅速な出張査定や柔軟な日程調整などにも対応可能です。
もし、江戸・明治期の学術書・医療書・科学書などをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ブックリバーにご相談ください。お客様の大切な蔵書が、時代を超えて次の研究者や読者の手に届くよう、私たちが全力でお手伝いいたします。